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毛周期停止(アロぺシアX)|ポメラニアンに多い脱毛症

2024.01.12

毛周期停止とは、毛の成長するサイクルが止まってしまうことで発生する脱毛症をさします。原因不明の脱毛症なので、「アロぺシア(脱毛)X」とも呼ばれています。
なぜ脱毛が起こるのか、原因が十分に解明されていないため、治療をしてもすべてのわんちゃんで発毛がみられるわけではありません。
健康上の問題はないものの、大切なわんちゃんの外貌が脱毛により変化してしまうことは、飼い主様にとって大きなショックです。
今回は、この毛周期停止(アロぺシアX)について、どういった病気なのかをご説明します。

毛周期停止(アロぺシアX)の特徴

毛周期停止(アロぺシアX)では、はじめに被毛の変化(毛艶が悪くなる、毛触りがバサバサとした質感になる)がみられることが多いです。その後、首やおしり、尾の毛が薄くなり、それが徐々に体幹部に拡がり、最終的には、頭(顔)と四肢以外が脱毛した状態になります。脱毛した皮膚が黒っぽく色素沈着することが一般的です。

日本では、ポメラニアンでの発症が圧倒的に多く、その他、トイプードル、チワワ、パピヨンなどでもみられます。
若齢犬で主に発症しますが、高齢犬でもみられることがあります。去勢をしていない雄で多いと言われていますが、未避妊雌、去勢雄、避妊雌でも発症し、性差はないという意見もあります。

毛周期停止(アロぺシアX)では、「脱毛」という皮膚の異常だけがみられ、他の身体的な異常はないことが特徴です。脱毛が拡がっても、健康状態には問題はなく、元気も食欲も変わりません。
基本的に、痒みはないのですが、脱毛した皮膚は刺激に弱いので、乾燥や外的な刺激、細菌感染(膿皮症)により、二次的に皮膚の痒みや炎症がみられることがあります。

診断方法

毛周期停止(アロぺシアX)は、この疾患を特定するための診断法がないので、
・犬種、症状などが毛周期停止(アロぺシアX)を疑う
・血液検査や画像検査などから脱毛の原因になる内分泌疾患を除外する
・皮膚の病理組織検査を行い、毛包の状態を確認する
といった方法で診断をします。

治療法

毛周期停止(アロぺシアX)の治療には、以下のような方法があります。
去勢手術、避妊手術:性ホルモンの異常が関連している可能性があるため、未去勢のわんちゃんや未避妊のわんちゃんでは、手術が勧められることがあります。
マイクロニードル法:皮膚に細かく小さな穴を多数あけることができる針がついた、専用のローラーで皮膚を刺激する方法です。局所麻酔や全身麻酔をして行います。
ホルモン調整剤の内服:甲状腺ホルモンや副腎ホルモンを調整するお薬を使用します。副作用が出ていないか定期的な血液検査を行い、体調をみながら使用します。
サプリメントによる治療:発毛の効果があるサプリメントを使用します。
毛周期停止(アロぺシアX)は、確実に発毛する治療方法がみつかっていないため、どの方法を試しても脱毛が改善しないことがあります。また、一度発毛がみられても、その後に再度脱毛が起こるケースも少なくありません。

ただ、脱毛が続いても本人に苦痛はなく、体調を崩すことはありません。そのため、積極的な治療はせずに、皮膚の保護(紫外線や接触物などの刺激から守るために外出時には服を着用する、皮膚のバリア機能を維持するために保湿をするなど)のみを行うという選択がされることもあります。

予防法

この疾患は、原因不明のため予防は難しいです。
わんちゃんとの触れ合いやケアをする中で、被毛や皮膚の様子に気になることがあったら、かかりつけの先生に相談し、状態を確認してもらうことが大切です。

まとめ

毛周期停止(アロぺシアX)は、ポメラニアンでの発生が多い脱毛症です。
脱毛以外に健康上の問題はないものの、ポメラニアンの特徴である、フワフワの被毛が抜けてしまうため、外貌の変化は著しく、飼い主様にとっては悩みが大きい疾患です。

治療法が確立していないため、発症した際の対応は難しいケースも多いですが、もし、わんちゃんの被毛に変化があり、診断や治療に苦慮する場合には、皮膚科の専門医を受診して、的確な診断を受けることが重要です。
その上で、わんちゃんにとってどういった治療法がよいのかを、ご家族で話し合い、選んでいただくことがよいでしょう。

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